イェマント氏の夢

<前編>
 氏は小さな美術館を管理していた。美術品に触発されて絵を描くのが楽しみだった。
 次第にどこかで静かに絵を描いて暮らしていたい…と言う思いが募り、氏は自らの殺人計画を立てる。
 すべては首尾よく行った。後は騒ぎがおさまるのを待ち、どこかへ経つだけだ。

 しかし有能な刑事によって事はあきらかにされる。さらに刑事は言う。
 知人がこの美術館を気に入ってよく来ていること。なくなっては残念だと言うこと。

<後編>
 美術館の評判はよかった。来館者はいつもすこしだけいい気分で帰った。
 小粒だが質の良い作品が並び、作品が作品を呼んで美術館は徐々に充実していった。

 館内を歩き回っていると、ふと1枚の絵に目が止まる。
 ーああ、かつては描いていたな。

 そこで目が覚めた。
 かくして氏は自らの殺人計画を実行する。

タイトルとURLをコピーしました